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資金繰り維持の必要性と方策

2020年5月12日

現在,事業者の皆様は,新型コロナウイルス感染症の広がり,それに続いての緊急事態宣言により,人が街に出なくなり売上が昨年と比べて著しく低下しているのではないでしょうか。あるいは売上がなくなったという方もおられると思います。売上が非常に落ち込んでいるのですから入金も当然非常に厳しいという状態にあります。

一方で売上がなくても毎月の経費は発生します。従業員の給料や水道光熱費あるいは店舗の賃料と言われる固定経費と言われるものです。もちろんこれ以外にも税金や社会保険料そして銀行への返済があります。

すなわち,たとえ売上はなくてもこれらの支払いは出ていくのです。しかしこの売上の極端な減少は皆様の責任ではありません。新型コロナによる影響は皆様の営業努力によってどうにかなるという次元をはるかに超えています。つまり現在世の中は新型コロナによって誰もが経験したことのない異常な事態が発生しているのです。

そしてここでは,売上による入金が期待できないのですから他の方法を考えればなりません。一つは公的金融機関等への融資を受けることです。しかし今,融資に対して金融機関への申込みは急増しており順番待ちの状況です。また融資を受けたらいずれは返済しなければなりませんのでその点の考慮も必要です。

業者の皆様に支払いをコントロールして資金を確保し資金繰りをつないでいくための方策をお伝えしたいと思います。

まず事業者の方がご自分でできる金グレ対策を考えなければなりません。それは入金がないのですから支出を抑制するということです利用者の方は真面目に事業をやって来られたので支払いを止めるということにものすごく抵抗感があります。しかし,今は非常事態によって入金がないのですから資金繰りを守るためには支出を抑制するしかないのです。

では具体的にどうするのか。支出を抑制するためには例えば次のことが考えられます。一つは税金の支払い猶予を求めること,二つは社会保険料の支払い猶予を求めること,三つは公共料金(水道光熱費)の支払猶予を求めること,四つは銀行に対する借入金の支払猶予を求めること,そして賃料の支払い猶予を止めることです。これらの支払いを止めるということは通常の事態ではなかなか容易なことではありません。しかし現在は非常事態です。

以下順番に概略を説明したいと思います。

まず税金です。税金には国税と地方税がありますがどちらにも猶予措置が設けられており,今回の新型コロナウイルス感染症の影響についてはさらに特例が設けられています。国税の特例制度については財務省のホームページに詳細が記載されています。対象となる税は所得税,法人税,消費税とほぼすべての税目になっております。もちろん一定の要件はありますが,対象となる方については1年間納付を猶予することができます。担保提供不要で延滞税もかかりません。最寄りの税務署に相談してみていただきたいと思います。

次に年金や健康保険等の社会保険料についても納付の利用制度があります。こちらは税金と同様の対応となります。こちらも詳しくは管轄の年金事務所や健康保険組合に相談してみてください。

公共料金については水道や電気やガスなどについても支払猶予の取組みがなされています。水道については支払猶予等の柔軟な措置の実施が予定されています。電気,ガスの各料金についても経済産業省の資源エネルギー庁から利用者に要請がなされており,各社支払猶予の申入れがあれば柔軟に対応することになります。

金融機関からの借入金についても金融機関は事業者からの元本の返済や利息の支払の猶予要請に対して,迅速かつ柔軟に対応することとされています。金融庁のホームページでも事業者の皆様が困った場合には積極的に金融機関に対して相談してくださいと伝えています。金融機関の方も丁寧に対応してくれると思われます。

一番の問題は賃料ではないでしょうか。店舗や事業所を借りている場合にはそれは事業の根幹をなす部分ですので,賃料の支払いを遅らせるということは非常に勇気のいることだと思います。しかし現在は非常事態です。皆様の責任でない事態によって売上が上がらず入金もないのです。他方,大家さんにしてもテナントがもし倒産してしまうと倒産した事業者にお金がなくて原状回復ができない場合,大家さん自身の負担で行わなければいけません。また,新しいテナントが入るまで賃料は入りません。すなわち新型コロナの影響で経済活動が止まっている間,賃料の支払を待つことによって利用者の方の資金繰り破綻を回避することは,お互い最悪の事態を避けるための必要な手段ということになると思われます。心を尽くして大家さんと交渉すべきではないでしょうか。なお賃料の支払いについては国土交通省から業界団体を通じて支払について柔軟に対応するよう依頼がされています。また国も賃貸人が賃料を減免免除した場合に税務上損金として認められる措置などを講じています。賃料の負担が重いという状況であればまずは賃貸人に時間的な支払の猶予や賃料の減額のお願いをすることが大切だと思います。