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M&Aの目的論

M&Aのファイナンス的側面(1)

2020年10月24日


 

M&Aと一口に言っても,TOBもM&A,事業承継もある。また,売上100億の会社もあれば1億の会社もある。今回は,EBITDA(営業利益+減価償却費,キャッシュフローの指標)1億でほぼ無借金でネットキャッシュが1億5000万あって無借金状態という感じでイメージしながらM&Aのファイナンス的側面を考察する。

 

当該企業の時価純資産はそのEBITDAとネットキャッシュを手元で計算し,規模感を把握し,投資クライテリアを満たすかどうかを即座に確認。企業価値はEBITDAの4~5倍くらいで考える。換金可能な非事業用資産はあるか,退職給付引当金が計上されているかどうかちょっと気になる…。この3つぐらいが一番重要なポイントかと思われる。

 

M&A実行の第一段階:社内体制・投資目的・投資クライテリア・投資判断基準・投資計画

 

まず一番大事なのは目的論,何のためにM&Aをするのかを画定する必要がある。目的の分類としては,一つ目は成長期獲得,もう一つは過当競争の解消,三つ目は衰退廃業倒産の防止ということになる。2番目として,投資クライテリア(形式基準)としてこれぐらいの規模サイズの企業を狙とかこういう業態の会社を狙うという感じである。3番目,投資判断基準(実質基準),どういう基準が満たされてれば案件としてGoか。4番目,デュープロセス・検討手順であり,結論が正しく,結果的に儲かったというのではなく,正しく組織的な意思決定をする努力や,役会決議事項であるとして,どういう社内検討順序どういう検討項目で検討が尽くされていればOKという手続の設計をすることが重要である。担当者は,ルール作りからアプローチするべきで,スクランブルプレーになりがちなM&Aの投資判断の在り方を平時から考えておくことが重要である。

 

M&AセンターとかM&Aキャピタルとかストライクなど,上場M&A各社も軒並み業績絶好調というようなところではある。やはり会社の経営者が高齢化してきておりまして今70歳台の経営者がたくさんおり,息子さんは別の仕事してます,という状況があり,従業員の方には資質がなかったり,資金がないという状況である場合に,自分で株だけ持ち続けて経営から離れる状態(所有と経営が分離した状態)は,未上場の中小中堅企業においては,ガバナンスの不足もあり,少し違和感がある,ということは多いように思われる。コントロールできなくなるので,いっそのことそのあたりで事業承継でかつ株式を手放すという形が非常に多くなってきて,ここ10年かなり多くなってきている。

 

そこでさらにシナジーと言うか自分の会社が雇用も安定して少し自分たちより大きな会社と一体として経営してもらうことで 強くなっていく,自社製品がより売れていく,とかに期待するところは非常に多いのかなと思われる。

 

これも目的論の延長で,M&Aのメリット・デメリットを整理する,ここで比較したいのは事業会社のM&Aとファンドによる M & Aである。ファンドというのははプライベートエクイティとも言って,お金を組合で集め,そのエンティティで投資をし,10年程度運営してリターンを出すようにする法形式である。事業会社は株主のリターンを満たすことを目標とするが,これを支える一番大きな要素は長期的成長性である。長期的成長のためにM&Aを含めて事業を展開する。長期成長性を支えるのは煎じ詰めると「独占」である。競合商品が世に出ないようにし,なるべく自社のシェアを増やす(横の独占),あるいはサプライチェーンを通して,より原材料から完成品までの利鞘を増やす(縦の独占)。その辺りの縦と横の独占というのがあるのがM&Aの大体の意義と考えて差支えはない。またその帰結として,買った会社を手放すってのは基本的にはない。ということは,買われた会社にとっては安定感が増すと言うかまあずっと倒産せずに,小さい会社で自分達だけでやってるよりはよっぽど安心していられるという側面はある。

 

((2)に続く)