本稿では,事業再構築補助金の,対象者の多いと思われる通常枠についての情報を速報します。
※注意・免責:以下は筆者の考察の入った記事となります。公募の内容について,理解に齟齬がある可能性は否定できないため,公募要領及び公的見解を必ず確認して,自己責任で正確な理解に努めていただければと思います。
目次
公募がようやくでました
問題点
事業再構築補助金とは何なのか
中小企業通常枠
どういうケースが今回の補助金に該当するのか
事業期間
補助対象経費
補助対象「外」経費
補助金の審査
申請開始
公募がようやくでました
3月中と言いつつやきもきしていましたが,先週金曜,ようやく公募が出ました。こちらが公募です。
(参照)事業再構築補助金 公募要領(第1回) jigyou-saikouchiku.jp
問題点
おおむねそれまでの内容と齟齬はないですが,私が気になっている点は以下の7点。
①審査項目でDXが強調されているのに,以前と同じ有形固定資産や設備に関する投資がメインで組まれている(DXであれば,クラウドが基本であり,1年の投資期間中に設備投資が完了しない。)。
②もっともよく使われるであろう新分野展開に関して,事業期間終了後,売上高の10%がその分野での売上高になることが必要とされるが,事業期間終了「後」というのは事業期間中に達成する必要があるのか,事業期間終了時には達成する必要がないのか,あいまい。
(参照)事業再構築指針の手引き www.meti.go.jp
③さらに,売上高の10%がその分野になる必要があるとすると,例えば売上高50億程度の会社は5億の売上を不慣れでな新規事業で作る計画を立てなければならず,しかもそれが9000万円程度の投資で達成できるわけがない(リターンが400%以上?そんな投資なら補助金がなくても誰でもやります)。売上高の企業はほぼこの補助金は使えないが,それでこの1兆単位の予算枠を使いきれるのか,経済的効果は十分あるのかどうかに疑問を感じる。
④例えばSaaSビジネスをスタートするといったときに,例えば10億,粗利50%のビジネスを作るときには100億程度の投資が必要。当然,DX的にはありなテーマではあるものの,補助金のサイズ的にあまり意味のないサイズとなる。
⑤付加価値額の改善について,改善の対象となる改善前の基準年度が明記されていない。
⑥付加価値額の改善について,達成できなかった場合,卒業枠やV字回復枠の方には不達成の場合の補助金の一部返還が明記されているが,通常枠の場合の不達成の場合の返還義務が明記されていないが,通常枠の場合は返還義務がない,そういう読み取り方(反対解釈)でよいかどうか確信が持てず,予測可能性が担保されていない。
⑦新分野展開の売上高10%要件については,それが達成できなかった場合に補助金の返還の義務が生じるのかどうか,明記されておらず,予測可能性を害している。
事業再構築補助金とは何なのか
・補助金予算が1兆円ととても大きい
・内容は新しい分野に展開とか業態を転換する中小企業にお金を出すというもの
中小企業通常枠
・100万円から6000万円 補助率2/3
・つまり9千万円の経費だったら2/3の6千万円国が出すという制度
・要件:申請する月の直前6ヶ月のうちの任意の3か月の売上合計が10%減
・事業計画を作る認定経営革新等支援機関や銀行と一緒に事業計画を作る
・その事業計画は,「付加価値額」が,3年後とか5年後に,3%上がるものであることが必要
・この「付加価値額」とは,ざっくりというと利益と給与と減価償却費を足したもの
どういうケースが今回の補助金に該当するのか
・ガソリン販売→新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応
・土木造成・造園→自社所有の土地を活用してオートキャンプ場を整備し、観光事業に新規参入
・喫茶店→テイクアウト販売
・居酒屋→オンライン注文
・レストラン→ドライブイン方式
・お弁当→高齢者向けの宅配
・衣服店→ネット販売
・オンライン形式教室
・タクシー→食料も宅配
・伝統工芸品工房→EC サイト
→8割方ネット関連(DX)
※菅内閣は前から中小企業の生産性が低いという問題意識があり(生産性が低い:人がいっぱいいる割には利益出てない),このままだと中小企業が滅びてしまうという危機感があり,そこを変えたいというのが今回の事業再構築補助金の根底にそもそもある。そこに今回コロナをつけたんで意図がぼやけてきている。
事業期間
・補助事業期間(1年程度):設備の購入等を行う期間
・次年度から事業計画期間:フォローアップ期間は5年間。年次報告が必要
・最大1年間は準備期間に充てられる
補助対象経費
【主要経費】
・建物費(建物の建築・改修に要する経費)
・建物撤去費
・設備費
・システム購入費
【関連経費】 【注】 「関連経費」には上限が設けられる予定
・外注費(製品開発に要する加工、設計等)
・技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
・研修費(教育訓練費等)
・広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
・リース費
・クラウドサービス費
・専門家経費
補助対象「外」経費
・補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
・不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
・販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
補助金の審査
・事業計画を基に行われる。採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要
・事業計画は、「認定経営革新等支援機関」と相談しつつ策定
・商工会議所
・中小企業診断士
・行政書士
・税理士
※事業計画作成を委託する際は報酬発生(もらう金額の5-15%程度)
申請期間(第1次)
・4月15日-4月30日
・予算額として、令和2年度第3次補正予算で、1兆1485億円が計上
・補助金の公募は、1回ではなく、令和3年度にも複数回実施,計4回の予定
申請方法
・全て電子申請となりますので、「GビズIDプライムアカウント」が必要,今回,早期化のため,暫定プライムアカウントという仕組みが導入された
暫定プライムアカウントの発行方法・留意点について
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
・通常のGビズIDプライムアカウントであれば,サイトから用紙をプリントアウトして書いてハンコ押して郵送し,2-3週間後にはアカウントを取得することはできる
経費の遡及ができる場合もある
・1月2月に買ってしまったものについても対象になる可能性もある
採択率
・全く読めない
・全4回の公募があり,だいたい,1回目80%,2回目で60%,3回目で40%と下がっていくケースが比較的多い
・今回も早い方が有利なのかもしれない
付加価値額未達成の場合
・補助金の返還の可能性について → 公募上,V字回復枠と卒業枠にのみ返還について言及がある。しかも通常枠との差額のみ。とすると通常枠の場合及び通常枠の範囲は返還の必要がないと思われる。やや不明確さが残る。
・付加価値額の3%の向上はそれほど難しくない,最後ボーナス等で給料上げたら達成できる
事業プラン検討例
1.不動産をリノベーションして新規ビジネスの箱に使う
・建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費、設備費、システム購入費
・事業的には何か不動産を活用しての用途を考えないといけません。
・転売はダメ ※転売も事業期間の5年経過後はありうるが,すぐには難しいことは確か
・相応に運転資金もいると思うのと,リスクもあると思うのでそれなりに練って考えないといけ
2.M&Aの活用
・高齢者向けデイサービス事業等の介護サービスを行っていたところ、コロナの影響で利用が減少→デイサービス事業を他社に譲渡。別の企業を「買収」し、病院向けの給食、事務等の受託サービス事業を開始
・補助経費の例:建物改修の費用,新サービス提供のための機器導入費や研修費用などという活用事例が提示されている
・買収資金には使えない(明確に株式の購入費は補助対象外とされている)
3.自社開発ソフトウェアの販売
・外販してシステムベンダーになるんであればありだと思われる
・共通しているのは,収益基盤を拡大するような取組みに対して補助金が出るというイメージ
・本来この補助金は中小企業のDXを推進することをきっかけにしている
・5年という長いスパンでの取組みなので,それくらい思い切ってもよさそう
・対象経費 「本補助金は、基本的に設備投資を支援するもの」。設備投資に当たる部分を考えていく必要があり,サーバーの購入とかでも良いのかもしれない。関連経費に関しては,開発に関し法人で会社と契約しているのであれば,そこは「外注費」としてみることができる。あとはAzureなどの開発プラットフォームの利用料は入れられるかもしれない。
各社,自社なら考えられるものを検討しておくことが重要
(補遺)補助金一般について
1.中小企業を応援する補助金
・持続化補助金
・ものづくり補助金
・持続化給付金
・今年3月からスタートする一時支援金
・事業再構築補助金
2.補助金のもらい方
・応募して審査があった上で採択
・採択率は基本,不明
・申請出通りに物を買う,多少値段は上下するかもしれない
・ちゃんと買ったという報告をしてそこから検査を受けてようやく支払いがある
・実際に応募してから支払いまでには半年とか1年ぐらいタイムラグがある
・この間は例えば500万円欲しいと言って申請を出しても実際もらうのはあとから,500万お金借り,設備投資を実行し,国から500万円支払われたら500万円を銀行に返す仕組み