2020年3月5日

ここで事例論点ですが,ZOZO の前澤さんを取り上げたいと思います。

TOBを発表して,株式を売却する話を発表した頃にちょっとリサーチしました。

報道だと株式を担保に入れて借入れしてたとかなんとかいろんな話があるんですけど,それはそれとしていたらそういう世界ばかり見ててもしょうがないんで,M&A屋としては「このM&Aがどうだったか」というのをM&Aのロジックで理解したいわけですね。それを理解しようとすると前澤さんの話ってのは非常によくできてる,すごくセンスがあるっていう感じがしました。

ZOZOTOWNの存在は,ファッションが好きな人達は知ってもらっていて,認知度はZOZOスーツなどの話題性や前澤さんの知名度もあって完全飽和状態。これからは,ファッションにそこまで興味のない人達にも知ってもらい使ってもらいながら広げていくしかない。そういう層に打って出るとするとマーケコストがものすごくかかりそうだと。情報弱者って言うかそういうところに,センスが働く人じゃない人達にリーチするには,やっぱり既存のお客さんを抱えているところとクロスセルをかけるほうが早いですよね。

たくさんの顧客を抱える企業でビジョンを共有できる,まあ孫さんみたいな人がいて前向きにというか,責任持って行ってくれる人がいるところですよね。そこにアプローチしましたと。全く無理がないシナリオです。

次に前澤さんは関与し続けるのかという話ですけど,創業経営者は,人から指示されたくないから,自分でリスクとってそこまでやってるわけですよね。それで一番やる気が出る人たちなんで,それはもうちょっとさっぱりと爽やかに止めるのが一番いいということになります。

ロジカルなテクノクラートによる専門家経営が次のステージはより効果的になっていくだろう,科学的にというかオーソドックスなスタイルを取っていくということは非常に大事になってくるだろう,という見立てがありました。

その中で Yahoo の基盤顧客基盤を活かして行く,ファッションのEコマースなんてやれるわけないって言うな感じだったと思うんですが,それをZOZOはやってのけ,それをYahooのような会社が既存の顧客基盤を生かしてすっぽり抜けている商材領域を生かして,専門的な見地の予測可能性の高い成長を図っていく,という現実味のあるシナリオです。

(ただ,株式相場が2020年に崩れる前に,売り抜きたかったという相場師的な側面はありそうです。)